神戸市では、地方自治法の改正をうけて、いわゆる「直営」をのぞく公の施設の管理運営を広く民間の事業者が参入しやすい『指定管理者制度運用指針』を2004年3月に発表しています。
その前文の中では『指定管理者制度』は(1)地方自治法が変わったので始めます。(2)公明正大に選びます。(3)経費削減への取り組みです。ということを述べています。とても簡略にまとめているので以下に全文引用します。
『地方自治法の改正により、公の施設の管理運営について、地方自治体が直接運営するものを除き、指定管理者制度の導入が義務付けられた。
そこで、平成16年1月に神戸市行財政改善懇談会ワーキンググループからの報告を受け、このたび公の施設の指定管理者制度の運用についての指針をまとめた。
指定管理者制度を導入するにあたり、指定管理者の選定に際して、幅広く公募を行うとともに、選定過程や手続の透明性・公正性を高めていくために、外部の有識者等の参画による選定委員会を局ごとに設置し、選定を行う。
また、直営施設も含め、すべての公の施設について、さらなる市民サービスの向上とコストの削減に取り組むとともに、管理運営チェックにより点検を実施し、民間事業者等との役割分担を明確にしていく。
公の施設の指定管理者制度地方自治法に定められた「公の施設」とは『・・・住民の福祉を増進する目的をもってその利用に供する施設・・・』とされています。保育所や児童館なども含まれています。 神戸市行財政局 公の施設の指定管理者制度
【神戸市の基本的姿勢】
神戸市の学童保育事業にかかわる対象施設は市立の児童館115館中102館(05年4月1日現在)未実施館もありますが、児童館というくくりで制度のお話をします。
※学童保育事業および児童館運営の担当課である「神戸市保健福祉局子育て支援部」では、平成16年度12月本会議における梶本日出夫助役の答弁を公式見解としている。以下引用。
考え方は「随意契約」「地域にお任せする」を基本に指定管理者制度に移行
「従来から地域の合意がある場合は地域団体や地域の社会福祉法人等と随意契約で委託契約として進めてまいったところでございまして,今後指定管理者を選定するに当たりましても,同じような考え方で基本的には随意指定で進めてまいりたいと思っておりますけれども,小学校区内に指定管理者を希望される地域団体あるいは地域の社会福祉法人がない場合は,これは公募の形で実施」
移行時期は「一定期間を置き随時移行」その間は「市社協」に随意で運営依頼
「地方自治法の猶予期間の平成18年の9月までの短期間で一挙に今までの市社協から地域団体等へ移行することにつきましては,事務的にも地域との関係などで混乱が予想されますために,一定の期間を置きながら随時移行させていきたい,このように考えております。それまでの間は市社協に随意指定で運営をお願いしていこう,このように考えております」2004年12月15日 平成16年第4回定例市会議事録これらの実施にあたり、よるべき条例は「神戸市立児童福祉施設条例」となります。
【市民からみた制度導入の様子】
以上のように、神戸市は「当該施設は公募における運営主体の変更はなじまない」としています。が、今年度新設の本山児童館では地域との合意にいたらず公募による選定をおこないました。市社協もふくめて民間企業や任意団体(ふれあいのまちづくり協議会、共同学童保育OBなど)からの複数の応募がありました。選定結果は「ふれあいのまちづくり協議会」となりました。
市民の視点からは、選定基準項目や配点が事前に公開されなかったことや選定方法など公募の仕組みには検討の余地があると考えます。また公募要項では「運営費」は「おおむね1,200万円」とあります。一般的に同規模の児童館の予算規模は1,600~1,800万円と聞いています。この差額が児童館事業にどのように反映されていくのか。これからも注視すべき事と考えます。
【雇用問題】
市立の児童館115館中すでに8館が運営主体の変更をおこなっています。残りの 107館のうちに市社協の委託の分が94館。市社協プロパーが96人,嘱託の職員が85名,臨時雇用が10人。トータルで191人の職員がいらっしゃいます。地域団体等への移行が進めば雇用問題の派生が予想されます。
【私たちが心配する事柄】
市としての「学童保育指針」もないまま、随意契約で地域に学童保育事業をお願いしていく。当局は地域の力に期待する旨を繰り返しますが、私たちは保育内容の低下を危惧します。
随意契約で学童保育を始める館では、指導員の時給730円で募集をかけました。2003年に市社協の指導員時給が920円から880円にカットされたというものの、さらに150円のマイナス。福祉労働者として希望のもてない数字です。保育内容への評価は実践を待つべきですが、子ども達は待てません。
私たちは地域方式学童保育の保護者と指導員が主体となり30年にわたり、要求運動を続けてきました。神戸市における「よりよい学童保育の実現」という視点から児童館における学童保育についても要望をあげ続けています。
児童館指導員の時給がカットされてからも、抗議を続けています。市内で学童保育事業を行っている箇所は170ヶ所。そのうちの大部分を占める児童館での学童保育の充実をはかることは全市的な学童保育事業のレベルアップにつながると考えています。